チャットGPTに「カメラマンに必要な要素は?」と聞いたら、
①技術的スキル
②芸術的センス
③コミュニケーション能力
④ビジネススキル
⑤情熱
⑥…
等々、それぞれ詳しい解説付きで返ってきます。完璧です。
ただ、長きに渡り多くのカメラマンを見てきた私は、ここにもう一つ大切な要素を加えるべきだと思っています。それが、表題の「アイデンティティー」。
一言カメラマンといっても、人によって仕事や写真へのスタンスはまちまちなわけです。たとえば、アーティストか、クリエイターか、はたまた職人か。
自己表現を追求するスタンスをアーティスト(作家)とし、人に喜ばれることや対価を前提にするスタンスをクリエイターと呼ぶとしても、そこにはっきりとした境界線があるわけではありません。
カメラマンは、それぞれ自身が居心地の良いバランス点を見出し、そこに居留まるために工夫や努力をしているものです。
ただ、将来カメラマンになりたいと考えている方に限れば、まだ自身に合ったポジションが見えていないという方が少なくありません。
そういった方々だってカメラマンとしての具体的な活動をしていく中で、自身の居心地の良いバランス点が徐々にわかっていく。それが自分自身の基軸、カメラマンのアイデンティティーということです。
なかにはカメラマンは自分にとって居心地の良い場所ではなかったと悟り、この道からは離れていく方がいます。当初は純粋にアーティストを目指していたけど、自分にとって一番居心地の良いところはクライアントの期待に応えるプロフェッショナルとしてのポジションだったという方もいます。アーティストとクリエイターを並行して両立させている方もいます。
以前、私は広告や雑誌等で活躍されているカメラマンを無作為に100名選び、その方々がカメラマンになるまでの経歴を調べてみたことがあります。
そこで興味深かったのは、約3割もの方がワーホリや留学などで長期の海外滞在経験をお持ちだったこと。留学といっても写真を専門に学んだ方が特段多かったわけでもなかったのにです。
では、海外長期滞在経験の何がカメラマンにさせたのか?
それは言葉が思う通りに通じず、仕事やお金や住む場所に不安をおぼえ、人種の違いがいや応なく自身の出自を考えさせる。そんな環境が、アイデンティティーを確立させることにプラスに働いたからだと思います。
日本で暮らしていれば、一般的にアイデンティティーは当人の問題なので、外部がその確立に関与することはありません。ましてや、「カメラマンで食べていけるかいけないか」というプライベート領域の問題と被るので「余計なお世話」と思われがちです。
願わくば、「カメラマンになるには」とググれば『アイデンティティー』を確立させる必要性が大事と出てくるくらいメジャーな要素になってもらいたいです。
カメラマンを目指す方の意識の片隅で「食べていけるかどうか」という切実な問題とは分けて、“妥協”ではなく“納得”できる答えを見出していただければ幸いです。